青色申告とは所得税の確定申告方法の一つです。
所得税は自分で税金の金額を計算して、確定した税額を申告する必要があります。
この、”確定した税額を申告”することを確定申告といいます。
そしてこの確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。
今回は、この青色申告について見ていきましょう。
青色申告と白色申告
”確定申告には青色申告と白色申告の2種類がある”ということは既にお話しました。
それでは、青色申告と白色申告では何が違うのでしょうか?
青色申告と白色申告の大きな違いは、作成する帳簿の種類と税制優遇の有無です。
青色申告は複式簿記(1つの取引を複数の勘定科目で記載する方法)にもとづいて帳簿を作成するのに対して、白色申告は単式簿記(1つの取引は1つの勘定科目での記載で良い)での帳簿作成が認められています。
青色申告は白色申告よりも帳簿の作成が少し複雑になるとイメージして下さい。
しかし、青色申告には白色申告には無い様々な税制優遇があるんです!!

作成した帳簿は青色申告・白色申告を問わず7年間保管します。
まだまだずぅ~~っと昔、戦前の日本のお話。
戦前の日本では帳簿をつけていないことも多く、帳簿をつけていたとしても記帳能力が低かったんだ。
そこで、政府はしっかりと帳簿をつけさせて、記帳能力を上げさせるために『私はしっかり帳簿をつけます!!』と宣言した人には様々な税制優遇を用意したんだよ♪
そして、『私はしっかり帳簿をつけます!!』と宣言した人たちの申告用紙は青色をしていて、一般の人の申告用紙は白色だったために、青色申告・白色申告という呼び方になったんだとさぁ~。
ちなみに、この『私はしっかり帳簿をつけます!!』という宣言がこれから出てくる、青色申告の申請手続きの際に提出する”青色申告承認申請書”になるんだよ。
青色申告ができる人
青色申告は確定申告をする人なら誰でも出来るのか?というと、そう言うわけではありません。
青色申告が出来る人は10種類の所得のうち、不動産所得・事業所得・山林所得のいずれかの所得がある人のみとなります。
富士山(不・事・山)は青いって覚えてみてね♪
関連記事▶ 所得は10種類に分類される”10種類の所得”って何?
なので、お給料(給与所得)しかない人は確定申告をしても青色申告を行うことが出来ません。
サラリーマンの副業は青色申告が出来るの?
サラリーマンで副業をおこなっている人の場合、年間で給与所得以外の所得が20万円を超える場合は確定申告が必要となります。
副業で確定申告するなら税制優遇のある青色申告で申告したいな~。
このように考えるひとも多いでしょう。
しかし、副業の所得は雑所得として扱われるため、基本的には青色申告での申告は行うことが出来ません。
その仕事を本業としているかどうかで所得の種類は事業所得か雑所得に分類されます。
- 事業所得:本業としている仕事から得られる所得
⇒個人事業主・フリーランス 等 - 雑所得 :副業から得られる所得
⇒会社員の副業 等
副業での所得金額が多くなってきて、継続的に利益が出るようになったら、会社員をしながら個人事業主になる”兼業”という形で、税務署に開業届を提出することにより青色申告が出来る場合もあります。
青色申告の申請手続き
青色申告での申告を希望する人は、青色申告の申請が必要となります。
この申請は、青色申告をしようとする年の3月15日までに『青色申告承認申請書』を税務署に提出することにより行います。
個人で独立開業する時は、開業届を提出するのと同時に『青色申告承認申請書』を提出することにより、青色申告を行うことができます。
なお、青色申告の申請を行っていない人は自動的に白色申告になります。
- 青色申告をしようとする年の3月15日までに『青色申告承認申請書』を税務署に提出する。
- 青色申告をしようとする年の1月16日以降に新たに開業した人は、開業日から2ヵ月以内に提出する。
青色申告の税制優遇
青色申告には白色申告には無い税制優遇があります。
青色申告の主な税制優遇には次の3つがあります。
- 青色申告特別控除
- 青色事業専従者給与の必要経費への算入
- 純損失の繰越控除と繰戻還付
それでは、この3つの税制優遇について詳しく見ていきましょう。
青色申告特別控除
青色申告特別控除とは、青色申告をすることによって特別に所得金額から55万円または10万円を控除することができる制度です。
控除できる金額は所得の種類(不動産所得・事業所得・山林所得)によって異なります。
事業所得と山林所得は簡単で、事業所得は55万円・山林所得は10万円の控除になります。
不動産所得の場合は少し複雑で、不動産の貸付が事業的規模の場合は55万円・事業的規模でない場合は10万円の控除になります。

後藤(5・10)さんは事業規模って覚えてみて♪
この控除は複数の所得があっても重複して使うことは出来ません。
例えば、事業所得(控除55万円)と山林所得(控除10万円)と不動産所得(事業規模:控除55万円)の3つの所得がある人でも、控除額は55万円になります。
※55万円+10万円+55万円=120万円の控除にはなりません。
青色事業専従者給与の必要経費への算入
まず初めに、青色事業専従者とは何のことでしょうか?
う~ん・・・・?? 青色ってついてるから、青色申告に何か関係ありそうだけど・・・・。何だろう・・!??
いいところに気が付いたね♪青色事業専従者っていうのは、青色申告を行っている人の家族従業員のことなんだよ♪
個人事業主は通常、家族や親族に支払った給与は必要経費にすることは出来ません。
しかし、青色申告をしている人は特別に家族や親族(青色事業専従者)に支払った給料は適正な金額であれば必要経費にすることができます。
これを青色事業専従者給与の必要経費への算入といいます。
この適用を受けるためには次の条件を満たしている必要があります。
給与を支払われている人の条件
- 青色申告をしている人と生計を一にする配偶者、もしくはその他の親族(15歳以上)であること。
- 専属でその事業に従事(じゅうじ)していること。
⇒専従者という字のとおり、専属でその事業に従事している必要があります。
専従者として給与を受け取っている人がパートやアルバイトをして他から給与を得ている場合は専従者としてみなされなくなる場合がありますので、注意が必要となります。
給与の条件
- 実際に給与を支払っていること。
- あらかじめ給与額を税務署に届出ていること。
- 給与額が労働の対価として妥当な金額であること。
家族の人に給与を支払うことにより、所得を分散させて所得税の税率を下げる効果や、支払った給与からは給与所得控除により一定割合を給与所得から控除できたりと、専従者へ給与を支払うことにより様々な節税効果があります。
関連記事▶ ”給与所得・給与所得控除”について詳しくはこちら
また、会社から受け取る給与には社会保険料がかかりますが、青色事業専従者へ支払う給与には社会保険料がかかりません。
これもメリットの一つと言えますね♪
純損失の繰越控除と繰戻還付
純損失ってなんだろう!?初めて聞く言葉だな~??
純損失とは、事業で出た赤字のことなんだよ♪
繰越控除(くりこしこうじょ)
青色申告をしている人は純損失(赤字)が生じた場合に、その純損失(赤字)を翌年以降3年間に渡って各年の所得(利益)から控除することができます。
これを繰越控除(くりこしこうじょ)といいます。
この繰越控除が出来る年数は白色申告の場合は0年、青色申告は3年、法人の場合は10年になります。
続いて繰越控除とはどんなものなのかを、イメージ図を使って見ていきましょう。

参考:オリコン顧客満足度ランキング
【損失が出た年】
この年は損失が100万円のため、納税額は0円になります。損失の100万円は翌年に繰越されます。
【繰越1年目】
この年は利益が10万円出ましたが、繰越した損失分の100万円があるので、利益10万円-損失100万円=損失90万円になります。よって、この年も納税額は0円。残りの損失90万円は翌年に繰り越されます。
【繰越2年目】
この年は利益が50万円出ましたが、繰越した損失分の90万円があるので、利益50万円-損失90万円=損失40万円になります。よって、この年も納税額は0円。残りの損失40万円は翌年に繰越されます。
【繰越3年目】
この年は利益が20万円出ましたが、繰越した損失分の40万円があるので、利益20万円-損失40万円=損失20万円になります。よって、この年も納税額は0円。繰越控除は3年が上限のため、翌年の4年目には残りの損失20万円の繰越は出来ません。
繰戻還付(くりもどしかんぷ)
損失が出た年の前年にも青色申告をしている場合には、その年の純損失(赤字)の額を前年の所得から控除して、前年分の所得税を還付してもらうことが出来ます。
これを繰戻還付(くりもどしかんぷ)といいます。
繰戻還付でさかのぼれるのは前年までになります。
前年分の利益よりも当年分の損失が大きく、繰戻還付をしても損失が残った場合は、残りの損失は繰越控除にまわすことができます。
続いて繰戻還付とはどんなものなのかを、イメージ図を使って見ていきましょう。

【損失が出た年】
この年は損失が100万円のため、納税額は0円になります。前年も青色申告をしていた場合は、損失の100万円は前年に繰り戻すことができます。
【前年分】
この年は利益が50万円出ていたので、この利益に対する税金を支払っていました。しかし、損失100万円が繰り戻されたことにより、利益50万円-損失100万円=損失50万円になるので、既に支払っていた税金分が還付されます。
そして、残った損失の50万円は繰越控除にまわすことができます。
まとめ
青色申告には税制優遇がたくさん有り、節税効果がバツグンです。
帳簿を複式簿記で作成するなど、少し手のかかる点はありますが、この複式簿記も簿記3級で学ぶことができます。
そして簿記や税金の知識はどんな事業を行うにも、とても大切な知識になります。
- 帳簿を自分で作成できるようになる
- 会社の財務状況が数字から把握できるようになる
- 銀行の融資が出やすい財務諸表がどのようなものかが分かる
- 税金を抑えることができる
- 税務をまかせている税理士に知識があるのかが分かる
などなど・・・・・・・・
是非みなさんも簿記の知識を身に付けて青色申告にチャレンジしてみて下さい。
今回学んだ知識が少しでもみなさんの資産形成のお役に立てたら嬉しいです。
みなさんの明日が今日よりもっと素敵な日になりますよ~に🎵