今回は所得税の求め方の5回目。”税額控除”について見ていきます。
前回の”所得税の求め方4回目”では、課税所得金額に所得税の税率を掛けて所得税額を計算しました。
所得税の金額が求められたから、これで所得税の計算は終わりだよね??
このように思う方も多いとおもいますが、所得税の金額が求められた後に、もう1度だけ控除を使えるチャンスがあるんです!!
その控除が今回お話する”税額控除”になります。

所得控除と税額控除
上記”所得税の計算の流れ”の表を見てください。
所得税を求める計算の中には、Step3の所得控除とStep5の税額控除という2種類の控除があります。
Step3の所得控除は合計所得金額から控除額を差し引きます。
これに対し、Step5の税額控除は所得税の金額から直接控除額を差し引くことができる控除になります。
税額控除は所得税の金額から直接控除額を差し引くことが出来るので、仮に所得控除と税額控除の金額が同じ場合は、所得控除よりも税額控除の方が税金の圧縮効果は高くなります。
これは、控除額を所得税の税率を掛ける前の金額から差し引くよりも、税率を掛けた後の金額から差し引いた方が効率が高くなるためです。
(100ー10)×20%=18
100×20%ー10=10
同じ10を引くのでも、20%をかける前で引くのと後で引くのでは、後で引いた方が効率が高いのが分かるね♪
所得控除と税額控除での税金圧縮効果の比較
それでは、実際に計算例を使って所得控除と税額控除が同じ金額だった場合に、どれくらい税金の金額が変わってくるのかを比較してみましょう。
例えば、所得税の求め方Step2で求められる合計所得金額が800万円のとき、
- 所得控除(Step3)が50万円の場合
- 税額控除(Step5)が50万円の場合
それぞれの所得税額がいくらになるのかを見てみましょう。


このように、所得控除の金額が50万円の場合の所得税額は108.9万円で、税額控除の金額が50万円の場合の所得税額は70.4万円と、控除額はそれぞれ50万円でも、最終的な所得税の金額は、税額控除を使った方が38.5万円も安くなりました。
所得控除と税額控除についてまとめると次のようになります。
つづいては、この税額控除にはどのような種類があるのかについて見ていきましょう。
税額控除の種類
税額控除には次の3種類の控除があります。
- 住宅ローン控除
住宅ローンを利用して住宅を取得したり増改築した場合に控除を受けることができる。 - 配当控除
配当所得について確定申告を行い、総合課税を選択することで控除を受けることができる。 - 外国税額控除
外国で所得税に相当する税金が課税された場合に、確定申告をすることで控除を受けることができる。
税額控除にはこれ以外にもいくつか種類があるんだけど、主に企業等が使用する控除になるんだ。だから、ここでは個人で使用が出来るこの3種類の税額控除について説明していくね♪
① 住宅ローン控除
住宅ローン控除とは、一定の要件を満たして10年以上の住宅ローンを利用して、住宅を取得したり増改築をした場合に受けることができる税額控除です。
住宅ローン控除の控除額などの概要はその年ごとに変わります。
以下の概要は2022年12月31日までに居住を開始した場合の概要になります。
控除額と控除期間
住宅ローン控除の控除額は年間最大40万円(認定住宅は50万円)で、控除期間は13年間になります。
※認定住宅(認定長期優良住宅)とは、劣化対策や耐震性・省エネ機能など、一定の基準を満たした住宅のことをいいます。
控除額の計算は控除1年目~10年目と11年目~13年目で異なります。

住宅ローン控除の要件
住宅ローンを使って家を買えばどんな場合でも住宅ローン控除は受けられるの?
住宅ローン控除の適用を受けるためには、いくつか要件があるんだよ♪これから一緒に要件を確認していこうね♪
◎住宅ローン控除の要件◎
【新築住宅】
- 住宅ローンの返済期間が10年以上であること
繰り上げ返済などで返済期間が10年以内になると、その時点で控除が受けられなくなります。 - 住宅の床面積が50㎡以上で、床面積の半分以上が居住スペースであること
- 金融機関から借り入れたローンであること
親族や知人からの借入金は住宅ローン控除の対象外になります。勤務先からの借入金の場合は、0.2%以上の利率により借入金であれば住宅ローン控除の対象になります。 - 自宅の購入であること
事業用建物や投資用物件・別荘・家族の家など、自分自身が居住しないものは対象外になります。 - 控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること
- 住宅ローン控除を受ける各年の年末まで引き続き居住していること
転勤などで、その住宅に居住していない間は住宅ローン控除を受けることはできません。再入居後は控除期間が残っていれば、再度控除を受けることができます。
単身赴任の場合は、家族がその家に住み続けていれば、引き続き控除を受けることができます。
住宅ローン控除は要件を満たしていれば、新築住宅はもちろんのこと、中古住宅にも使うことができます。
中古住宅の場合は、新築住宅の要件に加えて、築年数の要件を満たす必要があります。
◎住宅ローン控除の要件◎
【中古住宅】
中古住宅の場合は、新築住宅の要件に加えて、以下の①〜③のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 木造住宅:築20年以内
- 鉄筋コンクリートなどの耐火建築物:築25年以内
- 一定の耐震基準を満たすことが証明される住宅
住宅ローンのその他のポイント
- 住宅ローン控除を受けるには確定申告が必要
ただし、給与所得者の場合は、初年度に確定申告をすれば2年目以降は年末調整で控除ができます。 - その年の所得税額から住宅ローン控除額が控除しきれない場合は、翌年の住民税から控除することができる
- 店舗兼住宅も住宅部分に限って住宅ローン控除を使うことができる
ただし、住宅部分の割合が店舗部分よりも少ない場合は住宅ローンを受けることはできません。
② 配当控除
配当控除とは、株式などの配当金にかかる配当所得金額の10%または5%を所得税額から控除することができる税額控除です。
配当所得には下記の3つの申告方法がありますが、配当控除を受けるためには③確定申告を行い総合課税を選択する必要があります。
〜 配当所得の3つの申告方法 〜
- 確定申告をしない
- 確定申告を行い分離課税を選択
- 確定申告を行い総合課税を選択

▶▶”配当所得”について詳しくはこちら
配当控除の対象にならないもの
配当控除は”配当所得について確定申告を行い、総合課税を選択した場合に受けることができる”とお話をしましたが、すべての配当所得が配当控除の対象になるのではく、一部配当控除の対象にならないものもあります。
◎配当控除の対象にならないもの◎
- NISA口座で受け取った配当金
- 外国法人からの配当金
外国を対象に投資をしている株式・ETF・投資信託からの配当金も配当控除の対象になりません。
これらは、”外国税額控除”という別の税額控除の対象になります。 - 上場不動産投資信託(J-REIT)の分配金
配当控除の控除額
配当控除の控除額は配当所得の金額の10%になります。
ただし、配当所得と配当所得以外の所得を合算した金額(合計所得金額)が1,000万円を超えている場合には、1,000万円を超える部分の金額は5%の控除になります。

◎例1◎
- 配当所得以外の所得:500万円
- 配当所得 :400万円
- 合計所得金額 :900万円 の場合
合計所得金額が1,000万円以下なので、配当控除額は配当所得金額の10%になります。
配当所得400万円×10%=控除額40万円
◎例2◎
- 配当所得以外の所得:800万円
- 配当所得 :400万円
- 合計所得金額 :1,200万円 の場合
①配当所得の400万円の内、200万円分は合計所得金額で1,000万円以下になので、配当控除額は配当所得金額の10%になります。
②配当所得の400万円の内、残りの200万円は合計所得金額で1,000万円以上になるので、配当控除額は配当所得金額の5%になります。
①配当所得200万円×10%=控除額20万円
②配当所得200万円× 5 %=控除額10万円
①控除額20万円+②控除額10万円=控除額30万円
◎例3◎
- 配当所得以外の所得:1,100万円
- 配当所得 :400万円
- 合計所得金額 :1,500万円 の場合
合計所得金額が1,000万円以上なので、配当控除額は配当所得金額の5%になります。
配当所得400万円×5%=控除額20万円
③外国税額控除
外国税額控除とは、外国で課税された税金を一定の範囲で日本の所得税から控除する仕組みのことをいいます。
外国税額控除を受けるためには確定申告が必要になります。
外国税額控除は、外国と日本で税金が二重に課税されることを避けるための制度なんだよ♪
でも、僕たちの生活の中で外国で税金が課税されることなんてあるのかな?
外国の株式やETFなどから受け取る配当金は、外国と日本で二重に課税がされているんだよ♪
外国の株式やETFなどから支払われている配当金は、外国で10%の課税がされて、さらに国内で約20%の課税がされています。

このように外国株式や外国ETFなどから支払われている配当金は、外国と日本で二重課税されているので、確定申告をして外国税額控除を申請することにより、外国課税部分を一定の範囲で取り戻すことができます。
しかし、外国税額控除には上限があるため、必ずしも外国課税分の全額を取り戻せるわけではありません。
この控除の上限金額などを含め、外国税額控除についてさらに詳しく個別記事でまとめておりますので、興味のある方は下記をご参照ください。

まとめ
今回は所得税の求め方の最終回”税額控除”についてお話ししてきました。
所得税は所得税額を求めた後、最後にもう一度だけ控除を使うチャンスがあります。
その控除が今回お話しさせていただいた”税額控除”になります。
税額控除の内容をまとめると次のようになります。
今回お話しさせてもらった内容が少しでもみなさんの資産形成のお役に立てましたら幸いです。
みなさんの明日が今日よりもっと素敵な日になりますよ~~に♪
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