今回は10種類の所得のうちの1つである退職所得について詳しく見ていきましょう。
退職所得以外の所得の説明は下記をご参照ください。
各所得ごとに個別ページで詳しく説明しております。
退職所得とは
退職所得とは、退職によって勤務先から受け取る退職金などの所得をいいます。
確定拠出年金(個人型・企業型)や小規模企業共済・企業年金などを一時金で受け取った場合も退職所得に含まれます。
一方、退職金や確定拠出年金・小規模企業共済・企業年金などを複数年に分けて”年金”として受け取った場合は、雑所得として扱われます。
◎ 退職所得と雑所得の違い ◎
退職所得
退職金や確定拠出年金・小規模企業共済・企業年金などを一時金で受け取った場合
雑所得
退職金や確定拠出年金・小規模企業共済・企業年金などを複数年に分けて”年金”として受け取った場合
退職所得の計算
退職所得の計算は、収入金額(退職金など)から勤務年数に応じて金額が決まる退職所得控除額を差し引き、さらにその金額を半分(1/2)にすることが出来ます。
退職金には老後の生活資金としての意味合いがあるので、退職所得控除と1/2課税という2つの大きな優遇があるんだよ♪
退職所得控除額とは?
退職所得を計算する際に、退職金の金額から差し引ける控除のことを退職所得控除といいます。
この退職所得控除の金額は勤務年数に応じて決まります。
※確定拠出年金等は掛け金の拠出年数になります。
● 勤務年数(拠出年数)が20年以下の部分は1年につき40万円の控除額になります。
● 勤務年数(拠出年数)が20年を超える部分は1年につき70万円の控除額になります。

受け取った退職金がこの退職所得控除額の範囲内であれば税金はかかりません(非課税)。
受け取った退職金がこの退職所得控除額を超えた場合は、超えた金額部分の1/2が退職所得の金額になります。

それでは、実際に退職所得の計算をしてみましょう!!

退職所得の課税方法
退職所得は他の所得と合算しない分離課税になります。
▶▶”分離課税”の説明はこちら
”分離課税”と聞くと、税率は一律で20.315%と思われる方も多いかもしれません。
しかし、退職所得の場合は特別で、他の所得と合算はしませんが(分離課税)、所得の金額に応じて区分ごとに税率が変わる超過累進税率になります。
退職所得以外の分離課税の税率は一律(20.315%や39.63%等)なんだけど、退職所得だけは超過累進税率なんだよ!!
超過累進税率は所得の金額に応じて区分ごとに税率が変わります。
実際に所得税額を計算するときには、下記の速算表を用います。

例えば、退職所得の金額が500万円の場合は、所得税の税率が20%・控除額は427,500円になるので、所得税の金額を求める計算は以下のようになります。
500万円×20%-427,500円=572,500円
よって、退職所得の金額が500万円の場合の所得税額は572,500円になります。
次に、先ほどの退職所得の計算例を使って、退職金にはいくらの所得税がかかるのかを計算してみましょう。

退職所得には上記で求めた所得税の他に住民税もかかります。
住民税は所得金額に住民税率の一律10%を乗じた金額になります。
上記の計算例の場合だと、
③の退職所得の金額320万円×10%=320,000円となりますので、
住民税は32万5,000円になります。
2,000万円の退職金に対してかかる税金は所得税22万2,500円と住民税32万5,000円を合わせた54万7,500円だけです。
退職金(収入)に対しての税金の割合は約2.7%となり、他の所得では考えられないくらい退職所得が税制面で優遇されている事が分かると思います。
続いては、退職金を受け取った時に確定申告は必要になるのかどうかついて見ていきましょう。
退職所得の確定申告
退職所得を受け取った時に確定申告が必要になるかどうかは『退職所得の受給に関する申告書』を提出したかどうかで異なります。
● 『退職所得の受給に関する申告書』を提出した場合
⇒確定申告は不要
退職時に勤務先経由で税務署に『退職所得の受給に関する申告書』を提出した場合は、退職金の支払いが行われるときに適正な税額が源泉徴収されるので、確定申告の必要はありません。
●『退職所得の受給に関する申告書』を提出していない場合
⇒確定申告が必要
退職時に『退職所得の受給に関する申告書』を提出しなかった場合は、収入金額(退職金の額)に対して一律20.42%(所得税20%・復興特別所得税0.42%)が源泉徴収されます。
この場合は、適正な税額との差額を清算するために確定申告が必要になります。
ほとんどの場合は、実際の税額よりも多くの金額が源泉徴収されることになりますので、確定申告をすることにより払いすぎた税金の還付を受けることができます。