税金について学ぶ

消費税を納税する事業者と納税しない事業者

消費税は、私たち消費者から事業者に支払われます。

そして、消費税を受け取った事業者は消費者に代わり、この消費税を国や地方自治体に納税します。

この消費税を納税する義務がある事業者のことを課税事業者といいます。

ただし、一定の事業者には消費税の納税義務が免除されます。

この消費税の納税が免除された事業者のことを免税事業者といいます。

それでは、どのような事業者がこの免税事業者に該当するのでしょうか?

免税事業者の要件

消費税の納税義務が免除される事業者は、基準期間における課税売上高(消費税をもらっている売上高)が1,000万円以下である事業者に限られます。

まなぶくん

じゃあ、今年の売り上げが1,000万円以下だったら、今年は消費税の納税が免除されるんだね♪

まる

それが、少しややこしい話しなんだけど、基準期間っていうのは、その年ではなくて年前になるんだよね・・・。

基準期間

基準期間とは、納税義務の判定の際に用いる基準となる期間のことをいいます。

この基準期間は、その年の年前(法人の場合は事業年度前)になります。

例えば、基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以下であれば、課税期間(当年)の課税売上高が1,000万円を超えていても、当年の消費税納税義務は免除されます。

まる

消費税の納税が免除されるかどうかは、その年の売上高ではなく、2年前(前々年)の売上高で判断されるってことだね♪

新規に開業した場合

新規に事業を開業した場合は、最初の年間は基準期間がないため免税事業者になります。

例外として、資本金の額が1,000万円以上の法人は、最初の2年間も免税事業者になることはできず、初年度より消費税の納税義務者(課税事業者)になります。

まる

この例外は法人だけが対象なので、個人事業主の場合は大丈夫だよ♪

消費税の納税に関する届出書

消費税は基準期間の課税売上高が1,000万円を超えているかどうかで、2年後の消費税の納税が免除されるかどうかが決まります。

そのため、次のような場合には税務署に届出書を提出する必要があります。

  1. 基準期間の課税売上高が1,000万円以下になり2年後の納税義務が免除されることになった場合

  2. 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えたことにより2年後の納税義務が免除されなくなる場合

  3. 基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても消費税を納税する場合

どのような届出書が必要になるのかを順番に見ていきましょう。

① 消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書

これまで消費税の課税事業者(納税義務者)であった事業者の課税売上高が1,000万円以下になったことにより、その年から2年後の納税義務が免除されることになった場合に提出する書類。

消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書(PDF)

② 消費税課税事業者届出書

これまで消費税の免税事業者であった事業者の課税売上高が1,000万円を超えたことにより、その年から2年後の納税義務が免除されなくなった場合に提出する書類。

消費税課税事業者届出書(PDF)

③ 消費税課税事業者選択届出書

基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、免税事業者にはならず課税事業者(納税義務者)になることを選択する場合に提出する書類。

消費税課税事業者選択届出書(PDF)

まなぶくん

ちょっとまってよ!!どうして売上が1,000万円以下で消費税を納税しなくていいのに、わざわざ課税事業者になる必要があるの??

まる

いい質問だね♪ 場合によっては売上が1,000万円以下でも課税事業者になった方がいい場合もあるんだよ♪

売上1000万円以下でも課税事業者になった方がいい場合

基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても“消費税課税事業者選択届出書”を提出することにより、消費税の課税事業者になることができます。

それでは、あえて消費税の課税事業者になった方がいい場合とは、どのような場合なのでしょうか?

ここでは、“売上1,000万円以下でも課税事業者になった方がいい場合”を3つのパターンに分けて見ていきましょう。

① 消費者から受け取った消費税よりも仕入れや経費にかかった消費税の方が多い場合

消費税を受け取った事業者は消費者から受け取った消費税から仕入れや経費にかかった消費税を差し引いた金額を納税します。

一方で、消費者から受け取った消費税よりも仕入れや経費にかかった消費の方が多かった場合には、その差額分が還付されます。

しかし、消費税の還付を受けられるのは、課税事業者が消費税の申告をした場合に限られています。

まる

消費税の免税事業者は消費税の納税は免除されるけど、その代わりに消費税の還付も受けられないんだよ♪

そのため、消費税の還付を受ける場合には、売上が1,000万円以下であっても課税事業者になり、消費税の申告をする必要があります。

“消費税課税事業者選択届出書”を提出して課税事業者になった場合は、最低でも2年間は課税事業者を継続する必要があります。

課税事業者から免税事業者に戻るためには“消費税課税事業者選択不適用届出書”を提出することにより免税事業者に戻ることができますが、この2年縛りがあることには注意が必要です。

消費税課税事業者選択不適用届出書(PDF)

② マンションなど住居の貸出しによる賃料を得ている場合

不動産所得がある人のうち、物件の大半がマンションなどの居住用物件の場合には、基準期間の売上が1,000万円以下であっても、あえて課税事業者になることにより消費税の還付を受けられる場合があります。

その理由は、住宅の家賃には消費税が課税されないからです。

これは、住宅の家賃は家計の支出に占める割合が大きく、家賃に対して消費税を課税すると家計への影響が多いため、社会政策の一環として住宅の家賃に対する消費税が非課税にされているためです。

そのため、マンションなど居住用物件の貸主には消費者から受け取った消費税がありません。

しかし、居住用物件の修繕費や管理費などの経費には消費税がかかるので仕入れや経費にかかった消費税は発生します。

居住用物件の貸主には消費者から受け取った消費税はないが、仕入れや経費にかかった消費税は発生する。

そのため、売上が1,000万円以下であっても課税事業者になり、消費税の申告をすることにより、仕入れや経費にかかった消費税の還付を受けることが出来ます。

賃料に消費税が課税されないのはマンションなどの“居住用物件”のみになります。

事務所・テナント・駐車場など、居住用物件以外の賃料には消費税が課税されます。

③ インボイス制度への対応

インボイス制度と呼ばれる新しい制度が2023年10月から始まります。

このインボイス制度とは簡単にいうと、“適格請求書”と呼ばれる特殊な請求書でない場合には、仕入れや経費にかかった消費税として認めない。という制度になります。

まる

事業に必要な経費を支払っても、支払った相手側が“適格請求書”という請求書を発行しない場合には、支払った消費税は仕入れや経費にかかった消費税として消費者から受け取った消費税から差し引くことはできないんだよ・・・。

そして、この適格請求書を発行できる事業者は消費税の課税事業者に限られています。

適格請求書は課税事業者しか発行できない

まなぶくん

なんだって!! それじゃあ、免税事業者は適格請求書は発行できないってことか!!?

まる

そうなんだよ・・。だから、売上が1000万円以下で免税事業者の場合でも適格請求書を発行する場合には課税事業者になる必要があるんだよ♪

まなぶくん

でも、わざわざ消費税の納税義務が発生する課税事業者になってまで、その適格請求書っていうものを発行する必要はあるの??

適格請求書の発行は義務ではありません。

しかし、“適格請求書が発行できない”ということは、消費税を支払った相手側からすれば“支払った消費税を仕入れや経費にかかった消費税として消費者から受け取った消費税から差し引くことが出来ない”ということになります。

この場合、どのようなことが起こるかを考えてみると、

  1. 支払った消費税分の値下げを要求される
  2. 取引を中止される

などのケースが考えられます。

なので、取引先の相手方にもよりますが、今後の取引のことを考えて適格請求書の発行が必要になった場合には、売上が1,000万円以下であっても課税事業者になる必要があります。

まとめ

今回は消費税を納税する事業者(課税事業者)と消費税を納税しない事業者(免税事業者)について見てきました。

今回お話しした内容をまとめると次のようになります。

消費税は私たち消費者から事業者に支払われ、消費税を受け取った事業者が消費者に代わり、この消費税を納付する

消費税を納付する事業者のことを課税事業者と言う

基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下の事業者は消費税の納税が免除される

消費税の納税が免除された事業者のことを免税事業者と言う

新規に事業を開業した場合には、最初の2年間は基準期間がないため免税事業者になれる

売上が1,000万円以下でもあえて課税事業者になった方がいい場合もある(下記参照)

  1. 消費者から受け取った消費税よりも仕入れや経費にかかった消費税の方が多い場合

  2. マンションなどの住宅の貸付による賃料を得ている場合

  3. インボイス制度への対応

今回は、私たち消費者にとってのお話ではなく、消費者から消費税を受け取った事業者側のお話しでした。

今回お話ししたような“消費税を受け取った事業者”に対しての消費税のルールというのは、私たち消費者にとってはあまり馴染みのないものだと思います。

しかし、フリーランスで仕事をしたり副業を始めたりすると、みなさんは消費税を受け取る事業者側になります。

そうなった場合に、消費税の様々なルールに従い、消費税の申告や納税を行う必要が出てきます。

今回お話しさせていただいた内容が、少しでもみなさんの副業や起業をする際の後押しになりましたら幸いです。

みなさんの明日が素敵な日になりますよ〜に♪

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