ここでは所得税の求め方の2回目。”所得の合算・損益通算”について見ていきます。

10種類の所得のおさらい
前回の所得税の求め方1回目”10種類の所得”では次のようなお話をしました。
今回はこの総合課税の場合の所得の合算方法について一緒に学んでいきましょう♪
▶▶”10種類の所得”についてはこちら
▶▶”総合課税・分離課税”についてはこちら
総合課税になる所得の種類
10種類の所得のうち”総合課税”の場合は所得を合算するのは分かったけど、どの所得が総合課税になるのかな??
下の図を使って一緒に確認してみよう♪

この図の左側に書いてある所得は総合課税になりますので、それぞれの所得金額を合算します。
所得金額を合算するのは、総合課税同士の場合のみだよ♪
損益通算
総合課税の所得を合算する際に、損失(赤字)と利益(黒字)を相殺することができます。
この、損失(赤字)と利益(黒字)を相殺することを損益通算といいます。
損益通算の例を見てみましょう。
事業所得は利益が+500万円出ていて、不動産所得は損失がー300万円だった場合。
利益500万円 ー 損失300万円 = トータル200万円の利益
とても便利な損益通算ですが、損益通算ができる損失(赤字)とできない損失(赤字)があるんです。
損益通算ができる損失
損益通算ができる損失は、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得で生じた損失(赤字)に限られます。
富士山上(不・事・山・譲)で損益通算と覚えてみてね♪
損益通算が出来る損失(赤字)は不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得で生じた損失に限られますが、損益通算が出来る利益(黒字)はこの4つの所得に限定されておらず、他の所得の利益でも損益通算の対象になります。
副業(雑所得)で出た損失は、お給料(給与所得)とは損益通算が出来ないんだね♪
損失の繰越控除と繰戻還付
損失の繰越控除
その年の利益(黒字)よりも損失(赤字)の方が大きく、損益通算を行ってもまだ損失が残っている場合は、その損失分を翌年以降3年にわたって各年の所得金額から控除することができます。
これを繰越控除といいます。
確定申告を青色申告で行っている人はこの繰越控除を受けることができますが、白色申告の場合は繰越控除を受けることができません。
▶▶”青色申告と白色申告”についてはこちら
続いて繰越控除とはどんなものなのかを、イメージ図を使って見ていきましょう。

【損失が出た年】
この年は損失が100万円のため、納税額は0円になります。損失の100万円は翌年に繰越されます。
【繰越1年目】
この年は利益が10万円出ましたが、繰越した損失分の100万円があるので、利益10万円-損失100万円=損失90万円になります。よって、この年も納税額は0円。残りの損失90万円は翌年に繰り越されます。
【繰越2年目】
この年は利益が50万円出ましたが、繰越した損失分の90万円があるので、利益50万円-損失90万円=損失40万円になります。よって、この年も納税額は0円。残りの損失40万円は翌年に繰越されます。
【繰越3年目】
この年は利益が20万円出ましたが、繰越した損失分の40万円があるので、利益20万円-損失40万円=損失20万円になります。よって、この年も納税額は0円。繰越控除は3年が上限のため、翌年の4年目には残りの損失20万円の繰越は出来ません。
損失の繰戻還付
損失が出た年の前年にも青色申告をしている場合には、その年の純損失(赤字)の額を前年の所得から控除して、前年分の所得税を還付してもらうことが出来ます。
これを繰戻還付(くりもどしかんぷ)といいます。
繰戻還付でさかのぼれるのは前年までになります。
前年分の利益よりも当年分の損失が大きく、繰戻還付をしても損失が残った場合は、残りの損失は繰越控除にまわすことができます。
続いて繰戻還付とはどんなものなのかを、イメージ図を使って見ていきましょう。

【損失が出た年】
この年は損失が100万円のため、納税額は0円になります。前年も青色申告をしていた場合は、損失の100万円は前年に繰り戻すことができます。
【前年分】
この年は利益が50万円出ていたので、この利益に対する税金を支払っていました。しかし、損失100万円が繰り戻されたことにより、利益50万円-損失100万円=損失50万円になるので、既に支払っていた税金分が還付されます。
そして、残った損失の50万円は繰越控除にまわすことができます。
所得の合算・損益通算をしたその後は・・・?
所得の合算・損益通算をしたら、その次は、合算した所得の金額(合計所得金額)から所得控除を差し引きます。
所得控除とは、一定の要件にあてはまる場合に、その人の所得金額から差し引ける各種控除のことです。
この所得控除は、確定申告や会社の年末調整で申請をすることができます。
控除の申請を行うことで所得の金額を少なくすることにより、結果として税金を安くすることが出来ます。
この続きは所得税の求め方の3回目、所得控除にて説明をさせていただきます。
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